日本政策公庫では、無担保融資以外にも、土地や建物などの不動産を担保として資金調達できるいわゆる不動産担保ローンも取り扱っています。
では、実際に日本政策金融湖往古の不動産担保ローンはどの程度利用されており、どのような特徴をもっているのでしょうか。
本記事では、日本政策金融公庫の不動産担保ローンについて詳しく解説していきます。
資金調達を検討している方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
日本政策金融公庫における不動産担保ローン
日本政策金融公庫の不動産担保ローンとは、その名のとおり土地や建物などの不動産を担保する資金調達方法、あるいはそのサービスの名称であり、不動産担保融資とも呼ばれています。
日本政策金融公庫の不動産担保ローンでは、無担保融資と比べて資金調達できる金額も大きく、金利面でも1%前後と低金利かつ固定金利で借入が可能です。
特に、現在はマイナス金利から金利ある世界へと変わりつつあり、2025年12月には政策金利を0.75%に引き上げられています。
今後も政策金利が引き上げられる可能性も考えられるため、低金利かつ金利変動リスクを抑えて資金調達できる点は大きなメリットといえるでしょう。
創業期にある事業者や小規模事業者などは、無担保では高額の資金調達が難しいケースも多いです。
不動産担保ローンが活用できれば、返済期間も最大20年と長期にわたって返済できるため、毎月の返済負担を抑えられる可能性が高いでしょう。
とはいえ、不動産を担保として提供するからといって、必ずしも審査に通るとは限らない点は注意が必要です。
では、実際に日本政策金融公庫における不動産担保融資の状況はどのようになっているのでしょうか。
日本政策金融公庫の発表した資料を見てみると、下表のとおりとなっており、無担保融資が大半を占めているのが現状です。
| 年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 無担保融資 | 857,271(99.2) | 247,087(98.2) | 203,107(98.1) | 183,512(97.5) | 189,814(96.1) | |
| 担保融資 | 不動産 | 6,602(0.8) | 4,640(1.8) | 4,033(1.9) | 4,657(2.5) | 7,771(3.9) |
| 有価証券 | 1(0.0) | 0 | 1(0.0) | 1(0.0) | 1(0.0) | |
| 信用保証協会 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
| その他 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
| 合計 | 863,874(100.0) | 251,727(100.0) | 207,141(100.0) | 188,170(100.0) | 197,586(100.0) | |
直近の令和6年度の数値を見てみると、全体の融資件数197,586件のうち、無担保融資が189,814件と全体の96.1%を占め、不動産担保融資は3.9%の7,771件となっています。
令和2年度の不動産担保融資の件数自体は6,602件と令和6年度に次いで多いものの、コロナ関連の融資取組件数が多かったこともあり、全体で見ると0.8%に留まっています。
不動産担保融資の比率自体は、年々増加しているものの、依然として無担保融資が大半を占めていることが分かるでしょう。
不動産担保融資に比べて無担保融資が大半を占めている理由としては、日本政策金融公庫の融資期間が最長でも20年までとなっている点が考えられます。
民間金融機関の場合、融資の内容によっては20年を超える返済期間も設定可能です。
不動産を担保とする融資では、運転資金として資金調達を行うケースよりも、不動産取得や建物建設資金などの設備資金として利用されるケースが多いと考えられます。
昨今の物価高騰の影響から建設資材なども依然と比較して大幅に値上がりしており、中古建物などの値段も上昇しており、必然的に金額も高額になりやすいです。
たとえば、新たに収益物件取得を検討するとしても、返済期間が20年までしか設定できないとなると、返済できるだけのキャッシュフローが確保できないケースが考えられます。
このような点から、日本政策金融公庫で不動産担保ローンを利用するケースが少ない理由といえるでしょう。
日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴
日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴にはどのような点があげられるのでしょうか。
ここでは、日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴として以下のとおり解説しますので、それぞれ見ていきましょう。
担保提供できる資産は不動産(土地と建物)
日本政策金融公庫において、担保として認められるものは、基本的に不動産(土地や建物)が対象です。株式や投資信託などの有価証券を担保とする、いわゆる株式担保融資は基本的にできません。
担保とは、債務が返済できなくなった場合の損失リスクに備えて、債務者から返済の保証として提供されるもの(人や物)のことです。
たとえば、住宅ローンでは、家(土地・建物)を担保に入れることで、万が一返済できなくなった場合には、銀行はその家の売却資金でローンを回収します。
担保として提供するものは、何でも良いわけではありません。
あくまでも、換金して融資金の回収ができ、貸し倒れのリスクを減らせると認められたものでなくてはなりません。そのため、土地や建物などの実物資産が担保として認められやすいといえるでしょう。
株式や投資信託など有価証券の場合、不動産に比べて価格の変動も大きく、担保としての価値を評価するのが難しいです。
したがって、株式や投資信託などの有価証券は、担保として認められない傾向が強く、基本的に担保提供の対象となるのは不動産になるケースが多いといえるでしょう。
なお、必ずしも不動産だからといって担保として認められるとは限りません。担保として認められるかどうかは、日本政策金融公庫の融資担当者の判断による部分が多く、有価証券などの金融資産が担保として認められるケースもあるため、注意しておきましょう。
2番抵当でも可、住宅ローン返済中の物件も対象
日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴として、2番抵当でも融資を受けられる可能性がある点があげられるでしょう。
通常、不動産を担保として融資を受ける場合、先順位が設定されていると債権回収ができないリスクが高くなってしまいます。したがって、1番抵当が設定できない場合には、不動産担保ローンは利用できないとしている金融機関も少なくありません。
しかし、自宅を担保として提供する場合、住宅ローンを組んでいて、すでに銀行などの金融機関による抵当権が第1順位で担保設定されているケースも多いでしょう。
日本政策金融公庫の不動産担保ローンでは、担保の順位が必ずしも1番である必要はなく、2番抵当であっても担保として認められ、融資を受けられる可能性があります。
不動産担保融資では、担保の順位だけではなく「担保の対象となる不動産にどのくらいの価値があるか」が重要なポイントです。
たとえば、5,000万円の価値がある物件を所有していて、先順位として設定されている住宅ローンの残高が1,000万円まで減少していた場合、2番抵当でも4,000万円の担保価値があると判断できるでしょう。
一方、先順位に設定されている住宅ローンの残高が4,500万円残っていた場合、2番抵当だと500万円の担保価値しかありません。
万が一、返済ができずに売却価格も4,500万円であった場合には、住宅ローンの残債は返済できたとしても、2番抵当の分までは返済できない可能性が考えられます。
このように担保の評価に対して、先順位の残高が多い場合や、担保評価が不足する場合には、担保として認められないケースも十分考えられます。
しかし、担保不動産の評価が高い物件であれば、2番抵当であっても回収できる可能性が高いと判断でき、融資審査を通過できるケースが考えられるでしょう。
借入の金利が下がるため負担が減る
日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴として、借り入れの金利が下がるため、負担を減らせる点があげられます。
日本政策金融公庫で不動産担保融資を受けた場合、特別利率が適用となり、金利も1.55~4.10%での借り入れが可能です。
令和8年2月2日現在の日本政策金融公庫における有担保での借り入れ利率は下表のとおりです。
| 利率名称 | 年利 |
|---|---|
| 基準金利 | 2.30~4.50% |
| 特別利率A | 1.90~4.10% |
| 特別利率B | 1.65~3.85% |
| 特別利率C | 1.55~3.60% |
| 特別利率E | 1.55~3.10% |
| 特別利率J | 1.40~3.45% |
| 特別利率N | 2.00~3.40% |
| 特別利率P | 2.10~3.80% |
| 特別利率Q | 1.90~3.30% |
| 特別利率R | 2.10~3.50% |
| 特別利率U | 1.80~3.20% |
では、5,000万円・期間10年・元金均等返済で借りた場合、特別利率での最低金利である1.55%と基準利率の最大金利である4.5%で比べてみると利息にどのくらいの差が発生するでしょうか。
以下の表にまとめてみましたので見てみましょう。
| 年数 | 利息(金利1.55%) | 利息(金利4.5%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 739,479円 | 2,146,878円 | 1,407,399円 |
| 2年目 | 661,979円 | 1,921,878円 | 1,259,899円 |
| 3年目 | 584,480円 | 1,696,878円 | 1,112,398円 |
| 4年目 | 506,979円 | 1,471,878円 | 965,399円 |
| 5年目 | 429,479円 | 1,246,878円 | 817,399円 |
| 6年目 | 351,980円 | 1,021,878円 | 669,898円 |
| 7年目 | 274,479円 | 796,878円 | 522,399円 |
| 8年目 | 196,979円 | 571,878円 | 374,899円 |
| 9年目 | 119,480円 | 346,878円 | 227,398円 |
| 10年目 | 41,979円 | 121,878円 | 79,899円 |
| 合計 | 3,907,293円 | 11,343,780円 | 7,436,487円 |
10年間の合計利息は金利1.55%だと390万7,293円ですが、金利4.5%の場合は1,134万3,780円となり、利息負担だけでも743万6,487円の差が発生します。
事業者にとって、年間平均で74万円もの負担が減らせるのは大きなメリットといえるでしょう。
このように、担保提供によって借り入れの金利が下げられる点は、日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴の1つといえます。
担保不動産の審査に時間がかかり手続きが煩雑になる
日本政策金融公庫の不動産担保ローンの特徴として、担保不動産の審査に時間がかかるだけでなく、手続きが煩雑になる点があげられます。
不動産担保ローンを審査する際には、まず不動産の担保としてどのくらいの価値があるかを評価しなくてはなりません。
担保不動産の評価を行うには、周辺の売買価格事例を調べたり、路線価・固定資産税評価・公示地価などを参考にして算出したりする必要があります。
日本政策金融公庫の融資担当者による現地調査も行われるため、通常の融資審査より時間がかかる傾向が強いといえるでしょう。
また、債務者側も担保不動産の登記簿謄本や担保物件の所在地、固定資産税評価証明書などの審査に必要な書類も増えます。
さらに、抵当権の設定登記も必要であり、設定にかかる登記費用も負担しなくてはならない点も理解しておくと良いでしょう。
したがって、1,000万円以下の借り入れであれば、担保を入れない方が手続きもスムーズなため、事前に検討するのが重要です。
自身の名義不動産でなくともいい可能性がある
日本政策金融公庫の不動産担保ローンでは、自身の名義不動産でなくても活用できる可能性があります。
日本政策金融公庫の不動産担保ローンにおける担保不動産の名義は、債務者名義であることが原則です。
しかし、親・配偶者など家族の不動産であっても「担保提供に関する同意」を得られる場合には担保として設定可能です。
ただし、担保提供についてきちんと同意しているかどうかの意思確認を行うために、担保不動産の所有者本人と日本政策金融公庫の融資担当者で面談が行われるケースもあります。
ほかにも、担保不動産が複数人との共有名義になっている場合には、共有者全員の同意が必要となる点は注意が必要です。
共有者全員が連帯保証人または物上保証人となるため、同意が得られないことも十分考えられるでしょう。
また、共有不動産は、権利関係が複雑であるケースも多く、売却や活用がしにくいため、市場での需要が低くなりやすく、担保評価が低くなる傾向にあります。
担保評価が低く、希望する融資金額にならない可能性がある点は考慮しておくと良いでしょう。
日本政策金融公庫で不動産を担保に融資を受けるかの判断
本記事では、日本政策金融公庫の不動産担保ローンについて解説してきました。
日本政策金融公庫の不動産担保融資は、担保評価次第では住宅ローン返済中の物件など必ずしも1番抵当である必要はなく、不動産担保によって借り入れ利率を大きく下げられるため、利息負担を抑えることも可能です。
大口の借り入れを検討する場合には、日本政策金融公庫の不動産担保ローンを検討するのもおすすめできるでしょう。
一方、不動産担保ローンの場合、提出書類も多く、手続きが煩雑化する可能性も考えられます。
融資金額が少額の場合には、不動産担保を使わずに資金調達を検討するか、銀行融資やノンバンク系融資の際に、担保を活用することを検討すると良いでしょう。
いずれにしても、自社の状況に合わせて担保の活用を検討するのが大切です。
