安定的な資金繰りや事業拡大に向けた設備投資など、さまざまな場面で銀行融資を利用したいと考える個人事業主の方も多いでしょう。

しかし、銀行融資と聞くと大企業を対象とした法人向けのイメージが強く、個人事業主は銀行融資は利用しにくいと考える方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、資金調達支援を行う株式会社GOAL Fintechが、個人事業主の銀行融資について解説してきます。

個人事業主は銀行の融資を受けられる

個人事業主でも何ら問題なく銀行融資を利用できます。

事業運営を行う上では、さまざまな場面で資金が必要になるケースが考えられます。こうした場面での資金調達手段として役立てられるのが銀行融資です。

では、銀行融資を活用するメリットやデメリット、注意点にはどういったものが考えられるでしょうか。

ここでは、銀行融資を活用するメリットやデメリット、注意点について詳しく解説します。

銀行融資を活用するメリット

銀行融資には、以下のようなメリットが考えられます。

  • 金利が低く返済負担が軽い
  • 信用度が高まり、将来の融資にも有利
  • 長期的な取引関係を構築できる

それぞれのメリットについて詳しく解説しますので、見ていきましょう。

金利が低く返済負担が軽い

銀行融資を活用するメリットとして、金利が低く返済負担が軽い点があげられます。

個人事業主向けの融資商品として、消費者金融業者やネット銀行のビジネスローンなどが考えられますが、金利は年10〜15%程度のケースが一般的です。一方の銀行融資は、平均すると年2〜3%程度の低い金利で利用できるケースが多いでしょう。

消費者金融やネット銀行のビジネスローンと比べて、圧倒的に金利が低く、その分返済負担も抑えられます。

このように、金利が低く返済負担が軽い点は、銀行融資を活用するメリットといえるでしょう。

信用度が高まり、将来の融資にも有利

信用度が高まり、将来的な融資にも有利になる点は、銀行融資を活用するメリットとして考えられます。

銀行融資では、厳格な審査が行われているため、一度融資が受けられると、銀行からの信用度が向上し、次回以降の融資にも有利に働く可能性が高いです。

「銀行融資を受けている=信用できる事業者」だと銀行が認めた証拠とも考えられるため、取引先からの信用アップにつながります。

事業規模の拡大などで資金が必要な場合でも、融資実績が評価され、資金調達のハードルを下げられる可能性が高いです。

例えば、倉庫が手狭になってきたから、大きな倉庫を取得しようと考えた場合、全て自己資金で賄うには、資金が貯まるまでに長い時間を要するでしょう。しかし、銀行融資を利用して資金調達できれば、圧倒的に速く事業規模の拡大が可能になり、ビジネスの幅も広げやすくなるでしょう。

このように、信用度が高まり、将来的な融資にも有利に働く可能性がある点は、銀行融資を活用する大きなメリットといえるのです。

長期的な取引関係を構築できる

銀行融資を活用するメリットとして、長期的な取引関係を構築できる点があげられます。

銀行と聞くと、「晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」というように、経営状態が悪くなるとすぐに手のひらを反されるといったイメージの方も多いかもしれません。

確かに、かつての銀行にはこうしたケースも多かったといえるでしょう。

しかし、昨今では、地域金融機関による事業再生支援の取り組みが求められており、企業に寄り添い、事業改善や再生支援といった対応が求められています。

そのため、銀行側も融資先に対して販路紹介をはじめとした、さまざまな経営課題の解決に向けた支援を提供するように変化しつつあるといえるでしょう。

また、銀行は多くの企業と取引しているため、その顧客網を活かした経営支援が可能です。こうした支援を受けられれば、自社の事業改善だけでなく、事業拡大にも大いに役立てられます。銀行との長期的かつ良好な取引関係が構築できる可能性が期待できるでしょう。

このように、銀行融資の活用によって、銀行との長期的な取引関係が構築できる点は大きなメリットといえます。

銀行融資のデメリットと注意点

銀行融資を活用するメリットについて解説しましたが、銀行融資のデメリットと注意点にはどういったものが考えられるでしょうか。

ここでは、銀行融資のデメリットと注意点として以下のとおり解説します。

  • 審査が厳しい
  • 書類準備に時間がかかる
  • 借入実行まで時間がかかる

審査が厳しい

銀行融資のデメリットとして、審査が厳しい点が考えられるでしょう。

銀行審査においては、財務状況、事業内容、事業の安定性や将来性を十分に検証したうえで融資判断が行われます。例えば、赤字が続いている場合や、事業計画に不確定要素が多い場合には融資が断られることも十分にあり得ます。

特に返済期間が長期に及ぶ場合、根拠のある事業計画書の作成が重要です。数値に根拠がなく、絵に描いた餅では融資審査に通る可能性は低いでしょう。

銀行審査では、融資した資金を返済できるだけの原資があるかどうかを見ています。

個人商店や飲食業の場合、確定申告において売れ残りの商品などを家族で消費することも多く、こうした家事消費分を経費に計上しているケースもよく見られます。また、実際には生活費の一部なのに、経費として計上しているといったケースも少なくありません。

しかし、個人事業主の返済原資は、一般的に「申告所得額+青色(or白色)申告控除額+減価償却費-生計費」で算出しています。申告所得を抑えた場合、返済原資が足りないと判断され、審査に通らないケースが考えられるでしょう。

さらには、税金の滞納や過去の延滞履歴がある場合なども信用面に問題があるとして融資が通らない可能性が高いです。

このように、審査が厳しい点は銀行融資のデメリットといえるでしょう。

書類準備に時間がかかる

銀行融資は提出すべき書類も多く、書類を準備するのに時間がかかる点もデメリットとしてあげられます。

個人事業主で銀行融資を申し込む場合、一般的に以下のような書類の提出が求められます。

  • 確定申告書(2~3年分)
  • 資金使途確認資料
  • 受注明細や売上見込・推移
  • 金融機関の取引状況
  • 事業計画書
  • 資金繰り表
  • 印鑑証明書
  • 納税証明書
  • 固定資産名寄台帳 など

例えば、建設業の場合には、現在の工事受注状況や工事契約書の提出が必要になるケースが考えられるでしょう。また、飲食業などの場合には、毎月の売上や仕入額が分かる資料、卸小売業であれば、主要な販売先が分かる資料など、業種によって提出が必要な書類も異なります。

事業計画書の作成には時間がかかる可能性も高いです。このように、書類の準備に時間がかかることを想定したうえで、早めに銀行に相談しておくと良いでしょう。

借入実行まで時間がかかる

銀行融資は、申し込みから審査、契約、融資実行と順にステップを踏んでいくため、借入実行までに時間がかかるケースが多いです。そのため、急ぎで資金を調達したい場合には向いていないといえるでしょう。

銀行融資では、信用保証付融資、プロパー融資、担保の有無など、融資種類や方法にもよりますが、申し込みから融資の実行までに少なくとも2週間から1ヶ月以上は時間が必要です。書類の不備や審査の状況によっては更に時間がかかる可能性も十分考えられます。

したがって、借入実行までに時間がかかる点は注意しておきましょう。

急ぎで資金を調達したい場合には、消費者金融やネット銀行のビジネスローンなどを利用するのがおすすめできます。

提出書類も少なく、審査もスピーディーに行われるため、最短であれば即日、長くても1週間程度で資金調達できるでしょう。

自身の状況に合わせて銀行融資を検討することが大切です。

個人事業主が利用できる銀行融資の種類

個人事業主が銀行融資を受けるには、主に以下の3つの資金使途が対象となります。

  • 運転資金
  • 設備資金
  • 開業資金

個人事業主が利用できる銀行融資の種類としては、いずれの資金使途も「信用保証付き融資」もしくは「プロパー融資」の2種類に大別されます。

「信用保証付き融資」は、信用保証協会の保証を受けたうえで行われる融資であり、プロパー融資と比べて審査が通りやすいのが特徴です。

個人事業主は、比較的事業規模が小さいケースが多く、銀行融資を受ける場合には信用保証付き融資での対応となるケースが多いでしょう。

一方のプロパー融資は、信用保証協会の保証を必要とせず、金融機関独自の審査基準によって融資が行われます。

保証料不要で、比較的自由度の高い資金調達ができる点が特徴ですが、信用保証付き融資よりも審査ハードルが高い傾向にあります。

また、資金使途が開業資金の場合、事業内容や資金使途、担保の有無などによって異なりますが、比較的リスクも高くなりがちです。したがって、信用保証付き融資での取り組みとなるケースが多いでしょう。

なお、金融機関によって金利や審査基準は異なります。いずれの融資を利用する場合でも、事前に金融機関に相談し、ベストな融資方法を検討するようにしましょう。

個人事業主が銀行融資に通りやすくするための準備

個人事業主も銀行融資を受けることができます。

しかし、法人企業と比べて事業規模が小さいケースも多く、法人の決算書類のように科目内訳明細書などの詳細資料が少ないため、実態把握が難しい部分も多いです。そのため、銀行の融資審査も厳しくなりがちです。

個人事業主が銀行融資に通りやすくするには、以下の2点を押さえておくことがポイントになります。

  • 必要書類を整える
  • 融資の審査ポイントを確認する

それぞれどのような基準で考えると良いのでしょうか。

個人事業主が銀行融資に通りやすくするための準備について、詳しく解説しますので見ていきましょう。

必要書類を整える

個人事業主が銀行の融資審査を通過するには、必要書類を整えておくことが重要です。

ただ必要書類を揃えれば良いのではなく、数値に具体的な根拠を持たせ、説得力のある書類として整える必要があります。

個人事業主が銀行融資を通りやすくするには、以下の書類を整えておくことが求められます。

  • 確定申告書3期分
  • 青色申告決算書・損益計算書
  • 資金繰り表
  • 事業計画書

それぞれの書類のポイントについて詳しく解説しますので見ていきましょう。

確定申告書3期分

個人事業主の場合、確定申告書類一式を提出することはもちろんですが、3期分は提出できるよう準備しておくことが大切です。

融資審査においては、事業の売上や利益が安定的に推移しているかどうかは重要なポイントになります。

例えば、特需によって売上や利益が大きく計上できた期があっても、それは通常の事業実態とはいえません。

銀行としては、他の期の売上や利益がどうなっているかを比較するためにも複数期の確定申告を確認する必要があります。

こうした点からも確定申告書は3期分は準備するようにしましょう。

青色申告決算書・損益計算書

銀行融資を申し込む際は、青色申告決算書や損益計算書も含め、税務署に提出した確定申告書類のすべてを提出しなくてはなりません。

銀行は、提出された書類を基に融資審査を行います。提出した書類に不備があると銀行の融資審査に支障をきたす可能性が考えられるでしょう。

特に個人事業主は、法人の決算書類のように科目内訳明細書を作成しているケースは少なく、詳細が分かりにくいです。少ない財務情報から正確な融資審査を行うには、できる限り詳細なデータが必要になります。

したがって、融資を申し込む際には、以下の確定申告書類一式すべてを提出するようにしましょう。

  • 確定申告書(第一表・第二表)
  • 青色申告の場合・・・青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)
  • 白色申告の場合・・・収支内訳書
  • 減価償却費明細書などの付属書類 など

なお、銀行によって提出を求められる書類は異なります。事前に確認しておくと良いでしょう。

資金繰り表

返済期間が1年未満の短期資金を借入する場合には、資金繰り表の作成を求められるケースが考えられます。

資金繰り表は、将来の資金の流れを予測し、返済が可能であること、資金不足に陥る心配がないことを示すうえで重要な書類です。例え、黒字経営であっても、資金が回らなくなれば事業は継続できません。

資金繰り表の作成は、銀行に対して返済可能性を示すだけでなく、自社の資金繰り状況を適切に把握し、早めの対策を講じるためにも役立てられます。

常日頃から資金繰り表を作成していると、必要な資金調達や支払いの調整などもしやすくなり、銀行融資の審査においても信頼性を高めることにつながるでしょう。

こうした点からもしっかりとした資金繰り表を作成しておくことは、銀行の融資審査を通しやすくするためには重要なポイントといえるのです。

事業計画書

事業計画書は、事業の将来的な見通しを示すために必要な書類です。

事業の実現可能性や返済可能性について、根拠のある具体的な数値計画を立てることで、銀行に信頼感を与えなくてはなりません。

売上が増加していく計画なのであれば、販売数量がどれだけ増えるのか、もしくは販売単価がいくら上がるのかなど、具体的な根拠がないと信ぴょう性に欠けてしまいます。

ただ数字を並べただけの計画では実現可能性に乏しく、却って審査に悪い印象を与えかねません。融資審査を有利に進めるためにも、根拠を持った計画書の作成が必要なのです。

事業計画書には、以下のような内容を盛り込んでおくと良いでしょう。

項目内容
事業概要これまでの事業の沿革、事業の内容
資金計画資金使途と金額内訳、調達手段(銀行借入・自己資金)
市場分析需要、競合状況、SWOT分析など
売上計画毎月の売上予測とその数値の根拠
返済計画売上・利益予想と返済原資の見通し
アクションプラン計画達成に向けた具体的な方法や対策

このように、具体的な根拠や達成に向けた行動計画を示すことで、説得力のある事業計画の作成は、融資審査を通りやすくするうえで必要不可欠な要素といえます。

融資の審査ポイントを確認する

個人事業主が銀行融資を受ける際に、融資審査のポイントとしては、以下のような点を押さえておくことが求められます。

  • 売上・利益の安定性
  • 資金使途の明確さ
  • 税金・社会保険の納付状況
  • 個人信用情報(CIC・JICC)
  • 他行やカードローンの借入状況

ここからは、個人事業主が銀行融資の審査を受けるうえでポイントとなる点について解説しますので、詳しく見ていきましょう。

売上・利益の安定性

売上や利益が安定的に推移しているかどうかは、銀行融資の審査において重要なポイントの1つです。

売上や利益が不安定な事業の場合、融資をしても最後まで返済が履行されるかどうかの判断ができません。

仮に、現時点で赤字の場合、融資を受けることで事業がどのように改善していくのか、売上や利益がどうなるかといった事業計画に対する具体的な説明が求められるでしょう。

銀行は、基本的に赤字を補填する資金ではなく、安定した事業の成長に役立つことを期待して事業者へ融資を行っています。

したがって、慢性的な赤字や債務超過に陥っている事業者や、合理的な事業改善が見込めない事業者は銀行融資を受けるのは難しいといえるでしょう。

資金使途の明確さ

明確な資金使途は、銀行融資における基本的な審査ポイントの1つといえるでしょう。

「開業資金」の場合、「どのような設備を」「いくらで設置するのか」といった具体的な用途が必要です。

また、「運転資金」の場合も同様に「仕入資金なのか」「人件費なのか」といった具体的な資金使途の説明が不可欠といえます。

事業計画と資金使途に一貫性があるかどうかは融資審査における重要なチェック項目です。

資金使途が曖昧だと、銀行からの信用が得にくく、審査を通過できないケースも十分考えられます。

曖昧な理由ではなく、「なぜ借入するのか」「何に使うのか」といった借入の目的を明確に説明できるようにしておくことが大切です。

税金・社会保険の納付状況

個人事業主の銀行融資審査のポイントとして、税金・社会保険の納付状況に問題ないかといった点があげられます。

税金を納めていない場合、基本的に信用保証協会の制度融資は利用できません。また、「税金や社会保険料に未納がある=お金を払わない人」と判断されるため、プロパー融資のハードルが通常より高くなってしまう可能性が高いです。

個人事業主の場合、審査時の提出書類として納税証明書の提出を求められるケースが多く、税金や社会保険料に未納がある場合、融資審査においてマイナス評価を受ける可能性が考えられます。

このように、税金や社会保険の納付状況は、融資審査の可否にも影響するため、十分注意しておきましょう。

個人信用情報(CIC・JICC)

CICやJICCなどの個人信用情報に問題がないかどうかも銀行の融資審査において重要なポイントの1つです。

過去に、クレジットカードや携帯電話の支払、ローンなどの借入金の返済に遅れがあった場合、延滞・遅延や債務整理の履歴などの情報が金融事故情報として登録されてしまいます。

こうした支払いの延滞や遅延の履歴は、信用情報機関のデータベースに記録・保存されるため、将来の借入時に影響を及ぼす可能性が高いでしょう。

また、銀行へ融資申込みを検討しているのであれば、個人信用情報機関に対し、事前に情報開示請求を行うことで自身の信用情報がどうなっているかを確認しておくのも有効です。

信用情報に不安がある場合には、事前に信用情報の開示請求手続きを行い、状況を把握しておくようにしましょう。

他行やカードローンの借入状況

他行やカードローンの借入がある場合には、その状況についても適切に報告するようにしましょう。

他行に借入があることを隠して融資を申し込んだ場合、銀行は正確な融資審査ができません。また、申告した内容と、実際の借入状況に相違がある場合、虚偽の申告をしていると判断され、融資審査に通りにくくなる可能性が考えられます。

返済できるだけの原資が確保できない状況で融資を受けても、返済負担が大きくなるだけで事業継続も危うくなる可能性が高いでしょう。

しかし、他行に複数の事業資金借入があった場合でも、正確に申告しておけば、債務一本化などのサポートを受けられる可能性も考えられます。

債務一本化ができれば、新たに事業資金を借り入れしなくても資金が円滑に回るようになるケースも少なくありません。

適切なアドバイスや融資を受けるためにも、他行やカードローンなどの借入状況は正確に把握し、申告するようにしましょう。